新連載『ジントーヨー』開始

2014年11月18日更新

通信講座を受けなくても、一級を二つも持っている。残念ながら自慢にならない。身体障害者の一級二つなのだから、恥ずべきことである。 
　 
　二〇一四年私は七十歳少々。二十歳から苦しんだ痛風が、三十五年後に原発性アミロイドーシスとなって生死の境をさまよい、六十八日の断水断食で危篤状態を乗り越えて生きている。代わりに腎臓が停止し、一回正味四時間週三回の人工透析を十五年続けている。その人工透析のせいなのか、陳旧性心筋梗塞となり、まず心臓のペースメーカーを入れ、次に十四時間に及ぶ三本の冠動脈のバイパス手術を受ける。そして、十五年前に人工透析をするために動脈を体表近くにあげたが、それで左手の手首より先に血液が回りにくく、左手の指先はほとんど痺れていて時に激痛となる。右足の膝と太股にも激痛が走り、しばし歩けなくなる。どうやら脊柱管狭窄症らしい。らしいというのは、もう検査や手術がうんざりだからで、自分で調べて症状からそう思う。そして左目で直線を見ると凸凹にみえる黄斑変性症。
　写真は、二〇一四年現在の戦果。戦果というのが間違っていて、戦っても駄目だということだが、それはおいおい述べるとして、左下から身体障害者手帳、後期高齢者医療特定疾病療養受療証、後期高齢者医療被保険者証、特定疾患医療受給者票、自立支援医療受給者証、ペースメーカー手帳である。何という量。
　これでもか、これでもか、と普通の日常を送らせないように、次々に病をもたらす。食生活は限りなく玄米菜食に近く、運動もする。ストレスが原因になるようなことがない。
　それなのにどうしてなのか。
　ようやく、最も肝心なことに気付かされた。七十歳、遅いかもしれないが、死ぬまでに気付いただけでももうけものだと思う。
　この病の連続と病の不治は創造主の慈悲であり、過酷な期待である。
　もちろん私だけでない。創造主は、宇宙の真理、法則を学ばせるために、人間の肉体を脆弱に創造された。すなわち肉体という物質が病に侵され、怪我をするように作られたのは、意識によって、物の本質をどうにでも変えられることを、他でもない自分自身だと思っている肉体で学ばせようとされている、ということだ。
　人間の体のからくりの初歩を知った科学が、ようやく三次元映像を作ることができるようになった。というのは、人間の成人の目は左右は約六センチほど離れていて、その位置の違いによって、同じ物体を見ていても、左右の目が見る像は微妙にずれている。このずれが左右でわずかに異なる像を脳に送り、それを脳の中で統合することで、対象を立体的に認識している。このずれを人工的に作り出して、平面で表示された被写体が立体的に見えるようにしたのが三次元映像である。
　人間は、目で見ることが最も確かだと長く教えられてきたが、その目にしてさえこれである。本当は二次元、すなわち平面でしかない映像にいわば騙されて、三次元の立体映像だと勘違いしているのである。
　もちろんこれも生きていくためのシステムで、大幅に融通がきくようになっている。心理学の実験で逆さに見える眼鏡をかける。全てが倒立して見えるが、その苦痛に耐えてそのまま眠ると、早い人では次の朝には眼鏡をかけないと像は倒立したままでしか見えなくなってしまう。そして、今度は倒立眼鏡をかけずに倒立像に耐えていると、やがて普通に見えるようになる。
　こうした機能はあくまで生きるためのものであって、それ以上のものではない。だが、単に生きるためのシステムが人間の全てだと思うとことろに間違いがある。
　私たちの勘違いは目だけでない。人間そのものから人生そのものまでが勘違いばかりである。病気は、肉体や、人生であたりまえだと思っていることが、勘違いにすぎないことを学んで、宇宙の真理を知れという創造主の思いなのだろう。
　では、その創造主の思いという真理とは何だ。

※なお、『死に損ないの居直り啖呵』には、原発性アミロイドーシスで学んだことを、『万華鏡』には、陳旧性心筋梗塞により冠動脈三本の敷設手術より学んだことを書いたつもりです。よろしければご笑覧を。
『死に損ないの居直り啖呵』は、ibukitatsuhiko.comで、また『万華鏡』は紀伊國屋などの電子書籍で購入していただけます。

目 次

目　次