ユン・チョンホー。君は恥じているだろう、自分の祖国を。
私も深く恥じている、我が国を。
思春期に夢中になって語り合った世界は半世紀たっても作られなかった。

いや、それどころかあの当時より、間違いなく君の祖国も私の国も、想像を絶するほど堕落してしまった。

あなたは天国を語り、それが船ですぐにでも行けると信じて帰って行った。駅であなたを見送る時、あなたの希望に満ちた顔を忘れはしない。そしてその時、そんなにも輝かしい未来を夢見る君に嫉妬し、未来の見えない自分の国に失望した。

今日、君の祖国から届くとか言われているミサイル。それは数通の往復書簡を最後にぷっつりと消息が途絶えてしまったあなたからの50年ぶりの便りだったらどんなに喜ばしい事だろう。だが、悲しい推測で、あなたのような服従とか隷属を嫌った誇り高い男は、すでにこの世にいないのだろう。

あなたの希望の国は真っ赤な嘘で、希望どころか人間として生きていく最低レベルでさえ無い国になり、我が国は、あなたやあなたの家族や友が何としてでも手に入れたい食料を溢れさせ、無駄に食べ、病気を招き、それでも懲りないのか、放射能物質を垂れ流し、命と言う命を傷つけている。原子力発電が核武装の準備だったことが明白にもかかわらず、国策だと言い、経済の発展だと言い、地域の活性化だと言い、科学の進歩は止められないと言い、文化的生活を我慢できるかなどとたわけたことを言う連中は、あなたの国の若き指導者の暴挙を咎める資格など無い。

ユン・チョンホー君、ボク・トンチン君、ボク・トンカン君。チョン・ミヨコちゃん、チョン・ハグゴギさん、私たちの中では50年前から、いや幼い頃から近所づきあいをし、小学校、中学校と机を並べて、最初から国境なんてなかった。

夕陽を見ながら語り合った夢の国が無慚に踏みにじられた半世紀をどう取り戻し、どう創り直せるのか、暗澹たる思いしかない・・・のが悲しいが・・・何かを・・・ほそぼそでもいい・・・やり続けないと・・・

[注]ユン・チョンホー君以下在日朝鮮人の人たちは、1950年代から1984年にかけて行われた「在日朝鮮人帰還事業」と言う日本から朝鮮民主不義人民共和国への集団的な永住帰国、あるいは移住で帰国。日本政府の「厄介払い」と北朝鮮の体制の優位性を宣伝する思惑や韓国への牽制などいろいろ取り沙汰されるが、いずれにしても日本政府と北朝鮮政府の汚い思惑の犠牲者には変わりはない。

チューリップ人の愚かな営みを嘲笑いもせず、ただひたすらに咲いているチューリップ。
一週間前に開花し、夕方から花びらをすぼめ、また朝に開いている。
あまりのけなげさにどうしても見てもらいたかった。

桜は終わった。今度はお前が咲け、と言っているのだろうか?
嵐山の桜 その14

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